Never See The Turminus

タイトルは京都のバンド「The Lions」から拝借しました。終着点を見つけられないような生活をしている私ですが、日々気に入った音楽のことを書いていきます。

Turnoverというバンドについて

 ヴァージニア州のインディーロックバンドTurnoverが今年の9月に発表した3rdアルバム「Good Nature」の収録曲「Super Natural」のMVが先日Youtubeにアップロードされました。このTurnoverというバンド、知ってる人も多くいらっしゃるとは思いますが、もっともっと評価されるべき素晴らしいバンドだと最近本気で思うので、この記事を書きます。


Turnover - "Super Natural" (Official Music Video)

 このバンドについては以前から把握はしていたのですが、私が知った当時(多分2014年頃?)は自分自身エモ等の音楽に食傷気味だったこともあり、特に頭には残らなかったのですが、今回タワレコあたりでたまたまこの新作を手に取ってみたところ、「あれ、こんなバンドだったっけ?」という驚きとともにそのサウンドにすっかり虜になってしまいました。今年のアルバムではBeach Fossils「Somersault」の次に聴いている気がします。

Good Nature

Good Nature

 

 本作をカテゴライズすると、雑な括りですがやはりインディーポップ、ドリームポップになると思います。他の記事で書かれている通りReal EstateやBeach Fossils等に影響を受けたと思われる、リバーブの効いたクリーンのギターにロートーンのボーカルが特徴的ですが、全体的な雰囲気としてはDeath Cab For Cutieなんかに近い気がします。私のお気に入りは、M1「Super Natural」、M4「Butterfly Dream」、M8「Breeze」あたりですが、全曲ともに先述のバンドとは似てるようでまた違う独特の空気感があって素晴らしいです。

 さて、いよいよ気になって色々調べてみましたところ、このバンド、「あれ、こんなバンドだったっけ?」と思った通り、かつてのThe Promise Ring、Mock Orangeがそうだったように、大胆な変貌を遂げていたのです。


Turnover - Most of the Time (Official Music Video)

 1stアルバム「Magnolia」に収録されているこの曲を聴くと今でもびっくりしてしまいますが、まさにゼロ年代エモって感じで、私の印象ではCopelandやSundays Bestなんかを思い出しました。今流行ってる所謂狭義のエモリバイバルとは違い、この曲のギターにはオープンチューニングも開放弦を駆使したテクニカルなフレーズは使わていませんし、変拍子もフックになるキメもありません。いささか地味な印象を受けます。それでも、ボーカルのキャッチーなメロディセンスは光るものがあって、これはこれで嫌いではありません。


Turnover FULL SET (Chain Reaction 06.23.2013)

 この時期のライブ映像です。音源と比べて、よりパンク、ハードコアの色が強く見られます。Hey Mercedesぽさもあるかも。オーディエンスにはダイブやシンガロングが見られます。西海岸のエモバンドの一つとして、この頃から一定の人気があったようです。

 

 そこから2年後、Turnoverは2nd「Peripheral Vision」をリリースします。本作は1stのインディー・エモから大きく舵を取った作品で、これが巷では大きな反響を生んだようです。

Peripheral Vision

Peripheral Vision

 


Turnover (Full Set) at 1904 Music Hall

 ライブ映像の1曲目「Dizzy on the Comedown」からもうすでに名曲です。オーディエンスの大合唱がこの曲のメロディーの秀逸さを象徴しています。

 私は「Good Nature」を聴いた後、この動画を見つけて「Peripheral Vision」を入手しましたが、控えめに言っても名盤です。どっかのレビューサイトでは「エモとドリームポップのクロスオーバー」と記述していましたが、まさにその通りではないでしょうか。

 バンドサウンドは、当時飛ぶ鳥を落とす勢いだった(今もそうかもしれませんが)インディーレーベルCaptured Tracks、とりわけWild NothingsやDIIVなどのドリームポップ、シューゲイザーバンドの特徴に近い、空間系が深くかかったクリーンギターのアルペジオを主体としたものに変貌を遂げましたが、メロディーラインはエモーショナルかつメランコリックで、1stで発揮されたメロディセンスがしっかりと残っています。上記の「Dizzy on the Comedown」も他に、M1「Cutting My Fingers Off」、M3「Humming」、M6「Diazepam」、M8「Take My Head」あたりは、特にこのドリーミーなサウンドとエモーショナルなボーカルが見事に融合されています。本当に全曲素晴らしい。このアルバムが発売された2015年には見向きもしなかったことが悔やまれます。

 

 そして、今年9月の新作「Good Nature」を過去の作品と比較して改めて聴くと、音数は減り、バンドとして肩の力が抜けてように感じられ、更に洗練されたサウンドに仕上がっていることがわかります。

 かつて大学生の頃、バンド友達がThe Promise Ringの4th「Wood/Water」を「エモの向こう側」と表現していたのを思い出しました。私にとってこのアルバムもそういう位置づけになりました。


Turnover - "Butterfly Dream" (Official Audio)

 私のお気に入り、4曲目の「Butterfly Dream」です。2本のギターとベースのリフレインの絡みがひたすら心地よく、バッキングギターもドラムフィルインもほとんどないのに全く物足りなさはありません。ボーカルも、どこか陰りを感じますが不思議と口ずさみたくなるメロディーで、個人的にはここにエモの残り香のようなものを感じます。

 


Turnover - Live @ Crescent Ballroom 10/24/2017 (Full Show)

 最後に一番最近のライブ映像を載せてみました。残念なことに、新作の発表前(今年の6月)、オリジナルメンバーであるEricさん(ギター)が精神的な問題のため脱退してしまったそうです。短い期間にこれだけの変化を経験している彼らですから、苦労も多いことと思いますが、今後も頑張ってほしいです。そして、今年の来日公演は逃してしまったので、来年何らかの形で来日することを切に願います。